アメリカの格差是正デモと犯罪学を語る上で大切なこと。

世界的広がりを見せる格差是正デモと日本の若者の動き

アメリカで始まった格差是正デモは世界各地に飛び火し、大きなウネリとなっている。
以下はFNNニュース(http://www.fnn-news.com/)よりの引用である

また、ペンシルベニア州ピッツバーグで、2,000人規模のデモ行進が行われたほか、西海岸のロサンゼルスでも、デモ参加者たちは、「99%の庶民が苦しい生活をしている」などと書いたプラカードを持ち、気勢を上げた。
さらに、イタリアの首都ローマでは、参加者の一部が車に火をつけたり、商店の窓を割るなど暴徒化。
警察も、催涙ガスや放水車で応戦し、70人近くがけがをした。
さらに、イギリス・ロンドンでは、内部告発サイト「ウィキリークス」の創設者、ジュリアン・アサンジ容疑者も飛び入り参加した。
15日、およそ80カ国、900以上の都市で行われたデモ。
参加者たちは、富裕層に利益が集中する経済構造などに反対を訴えた。*1

対して、日本の動きはどうかというと、今現在それほど大きな抗議活動には発展していない。
「最近の若者は…」とか、「昔の日本人にはバイタリティがあった」などと言いたくなる人もいるかもしれなない。 しかし、本当に「若者の無気力」が今回の動きの原因なのかだろうか。

動かない日本の若者?

実はアメリカの学生と日本の学生には、失業率の増加によって受ける影響に大きな違いがある。アメリカの学生は、「大学にいくのは自分への投資であり、自分の利益のために行くものだ」という考えの元、学生ローンを自ら組み大学卒業後返済するというのが一般的である。つまり、大学卒業後に働く場所がないということは、ローンも返せず、生活のあてもないという状態を意味する。たいして、日本の学生は、そのような社会的条件が整備されていないこともあり*2、ほとんどの学生はその学費を親に支払ってもらっている。ここまで説明すれば、どちらの学生がより切羽詰まっているかは明白であろう。
人が大きな行動を起こすとき、そこにはなんらかの社会的背景、環境による原因がある可能性が高い。この事実は、犯罪学を考える上でも大切な一つのアイディアである。

犯罪学を語る上で大切なこと

生まれながらにして犯罪者となるべくして生まれた犯罪者はいるのか。
イタリア実証学派の一人であり、彼自身が医師でもあったロンブローゾは、その問いにイエスと答えた。彼は兵士と犯罪者によく見られる形質の違いに着目し、犯罪者の形質を「先祖帰り」と称し、生まれながらの犯罪者の形質と定義した。この説を発端に、ヨーロッパで優生学が生じ、最終的にナチスの歴史的大犯罪につながったことは言うまでもない。
犯罪行動に陥りやすい遺伝的形質の存在の可能性は否定することはできないが、それが絶対的なものであるという主張は明らかに間違っている。この違いは実に大きい。
刑法の刑罰論における特別予防的側面は、そういった考えのもと存在している。本来犯罪を起こす必要のなかった受刑者を、矯正することにより、今後犯罪を重ねることのないようにする。…簡単なことではない、だがそれも刑法の大事な役割の一つである。


*1:http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00209623.html 10月16日21時参照

*2:日本では借りたくても銀行が貸してくれないだろう。